アラブの声ブログ

「アラブの声ML」から極一部を抜粋、日欧米メディアが伝えない主にアラビア語のメディアからイラク問題を中心とするアラブ・イスラム世界の記事を抄訳し発信。リンクや商業目的以外の転載は自由です。

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ロービング・アイ 影のイラク政府  ペペ・エスコバール

イラクに対する理想的なホワイトハウス/国防総省のシナリオは、アメリカ寄りの政府、世界中の既知石油埋蔵量の少なくとも12%を完全に支配すること、それを実現させる14の軍事基地を要求している。一方で現実は別のアイデアをかき立てている。

メソポタミアで、いわゆる「権力の委譲」が行われるたびごとに、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は、きまってバグダッド行き飛行機に乗る。建前上独立した新イラク政府に命令を発する為に企てられた最近の出張中、ラムズフェルドは素晴らしい本音の出た失言で、アメリカはイラク「撤退戦略など持ち合わせておらず」、あるのは「勝利戦略」のみであることを公式に明らかにした。これは「我々はどこにも行きはしないぞ」を意味する符丁だ。

ラムズフェルドが到着する二日前に現実が邪魔をして、約300,000人のシーア派民族主義者達が、2003年4月9日の「解放の日」と同じあのフィルダウス広場を埋めたが、今回はサダムの銅像を引き倒すという写真撮影狙いのイベントはなしだった。彼らのメッセージは明確だった。占領反対、ブッシュはサダム・フセインと同じだ。

1958年以来、イラク最大の大衆デモという、この大規模なシーア派の大衆抗議行動を動員することで、若き聖職者ムクタダ・アル-サドルは単に政治的な真空を埋めているだけに留まらない。彼は、同じくシーア派の有権者に支持を訴えているダワ党の新首相イブラヒム・ジャファリに、旗幟を鮮明にするようにと挑戦したのだ。

ムクタダと彼の何千人もの同志は言っていた。「独立」というポーズをとりながら、同時に占領を是認することは不可能だ。新イラク大統領、クルド人軍閥指導者ジャラル・タラバニも、自分の旗幟を鮮明にした。アメリカの軍隊には留まって欲しいと述べたのだ。タラバニは、イスラエル、イランのシャー、トルコ、イギリス、アメリカと、隣人やらあらゆる人々と怪しげな取引をしてきた経歴があり、ライバルの軍閥指揮官マスウード・バルザニとの綱引きは、何万人ものクルド人の死を招いた。

火に油をそそぐのが、タラバニは今やクルド人のペシュメルガと混成シーア派民兵を、スンニ派アラブ人の抵抗勢力との戦いに投入する案を気に入っている点だが、これは内戦を起こすこと必定という処方箋だ。ペシュメルガがキルクーク油田警備に配備されたその日から内戦が始まろう。

サドル派は、今や非常によく組織化され、あからさまな反宗派的、反占領運動の組織だが、2004年のムクタダと国防総省との直接対決以後、政治的な知恵をいくつか身につけた。新国会で彼らは23議席を得た。シーア派が多数派を占める南部の都市バスラの選挙では、市議会の41議席のうち彼らはわずか12議席しか得られなかった。イラク・イスラム革命最高会議(SCIRI)は20議席を勝ち取った。しかしながらサドル派は連立形成に成功し、今や実際にバスラを掌握している。サドル派のマフディ軍団は、SCIRIのバドル軍団よりさらに強力だ。マフディ軍団の介入が無ければ、バドル軍団は南部のあらゆる政府機関を乗っ取っていただろう。バドル軍団の酷薄な強盗的手法のおかげで、多数のシーア派の人々は、ともあれマフディ軍団にも疑念を抱くようになっている。バスラ周辺南部のシーア派地域では、地方議会、警察、行政機構シーア派の民兵が支配している。

宗教的なアウトサイダーのムクタダとサドル派は、賢明にもジャファリと彼の支持者達、つまり有力なナジャフのシーア派聖職者を、耐えられない立場に追いやった。ムクタダと大アヤトラ、アリ・アル-シスタニ間の叙事詩的戦闘において、サドル派総力を挙げての占領終焉キャンペーンは人々の琴線に触れている。バグダッドにおける論争と腐敗、蝸牛の歩みの政治プロセス、そして、とりわけ実にひどい日々の生活条件に世論は苛立っていたのだ。

我々の殺し屋に手を触れるな

ワシントンの筋書きによれば、占領軍がますます表面に出なくなってきているのは、イラク人兵力による抑圧遂行の増加を意味している。これはつまり、新イラクの治安諜報活動の諜報員というポーズをとった、サダムの秘密組織ムハバラト諜報員の完全復帰を意味するのだ。うわべ上、それが公民権を奪われたムクタダを再組織化するやり口だろう。我々を抑圧した同じ連中が戻ってくるのだから、ブッシュはサダムと同じだ、と大衆は考えている。1991年の第一次湾岸戦争末期、シーア派の反乱をサダムが粉砕するのを、父親のジョージ・ブッシュが拱手傍観していたのを皆苦々しく覚えていることを持ち出すまでもない。大衆はアル-ジャファリのシーア派に対するラムズフェルドのメッセージの意味するところを正しく理解していた。軍隊と内務省には手を出すな、つまり、わが懐かしきムハバラトの仲間や対ゲリラ活動専門家には手をだすな、ということだと。

ムハバラトの諜報員達を組織化するという入念な国防総省の計画ではスポットが当てられていないものに、同じスンニ派のサダム時代の工作員は、必ずしもスンニ派抵抗勢力と戦う気分にはなれないかも知れないということがある。この公式をさらにややこしくするのが、アメリカが訓練したイラク治安部隊の70%はかつてのバース党員ということがある。奇襲隊員や10,000人の工作員達はほぼ100%、かつてのサダム軍の将校でなりたっている。もしジャファリ政権が彼らを追放すれば、イラク人に汚い仕事をさせるというアメリカの夢も一巻の終わりだ。

一触即発のあらゆる懸案事項、つまり、連邦制度、誰がキルクークを得るのか、石油産業の運命等が、大統領、二人の副大統領と一人の首相が任命される前の9週間の混乱を招いたのだが、新憲法を巡る交渉の中で再び懸案事項が復活した。バグダッドの人々は、アメリカが押しつける日程の通り、今後4か月の間に新憲法草案ができると期待するのは現実的ではないことを知っている。

険悪な予兆はふんだんにある。二人いるイラク人新副大統領の一人、スンニ派の部族長ガジ・アル-ヤワルは、シーア派とクルド人がスンニ派アラブ人に対し本来の6人ではなく、わずか4人しか大臣職を与えないことに決めたのを怒っている。我々がスンニ派アラブ人の「シンフェーン党的立場」と名付けたものを、シーア派とクルド人は、さらに周辺的な立場に追いやっているといって、今や穏健派のスンニ派教徒たちさえもが責めている。

さらに、世界的メディアがもう何日にもわたって垂れ流しつづけている、バグダッド南方のマダインでスンニ派抵抗勢力のうちのワッハーブ派強硬派分子が150人のシーア派を誘拐したという話は、えらく手の込んだでっちあげだが、元CIA協力者で、暫定首相の座を退くイヤド・アラウイは、この人質事件といわれるものに対して、早速「汚らしい残虐行為だ」と述べた。この物語がSCIRIによって仕組まれたものであることは明白だ。スンニ派のムスリム学者協会の有力者、アブドゥル・サラム・アル-クバイシ師は「これは小規模のファルージャを創り出すための言い訳だ。」と言っている。イラク人は、内戦をほのめかして利益を得るのは唯一占領軍しかないと考えがちだ。

アラウイは、バグダッドではアメリカの手先として知られているが、彼にも怒り狂うだけの理由がある。秘密警察ムハバラトが率いる諜報組織を編成し、グリーン・ゾーンと協力して、全体的な抑圧を行うため、アラウイは内務省をひどく欲しがっていた。SCIRIのシーア派連中は、断固として「ノー」と答えたのだ。次期内務大臣は、ハディ・アル-アミーリ、つまりバドル軍団の指導者だ。アミーリはラムズフェルドの膨大な持ち駒中、最悪の選択だ、という表現すら控えめに過ぎるだろう。

SCIRIの準軍事部隊で、最近バドル・オルガニゼーションと改名したこのバドル軍団は、亡命生活を送る中でイランの革命防衛隊に訓練されたことは良く知られている。そこで連中は、全てのスンニ派アラブ人に対し、極めて猜疑心が強い。そこでアフガニスタンと同様に、イラクの私兵(ペシュメルガ、バドル軍団)は政府の軍と警察と融合し、かつてのバース党の友アラウイの小規模な民兵と競合し、パキスタン製の武器で武装し、アメリカの行動計画に従っている。この破壊的なカクテルに加えて、アブー・ムスアブ・ザルカウイ風のワッハーブ派強硬派がいるが、彼らはシーア派の殺戮に快感を覚える連中ゆえ、全体的構図は混沌状態だ。やはりここでもまた、大半のイラク人の目から見れば、これで恩恵を受けるのは唯一占領軍のみだ。

地獄行き高速道路
占領は、経済的津波より始末におえない。それは、かつてはアラブ世界の発展を導く光明であったイラクを、サハラ砂漠以南地域の貧困に貶めるよう仕組まれていた。日々の通電時間は2003年或いは2004年よりも短くなった。電気もなく国中が麻痺状態だ。通信、産業、医療制度、教育制度、なにひとつとしてまともに機能していない。あの「ベクテル社」によって再建された全ての浄水場は崩壊しつつある。毎週、時によっては毎日パイプラインへの攻撃があって、原油生産はみじめなもので、依然としてサダム時代の戦前水準以下だ。全人口の60%が食糧切符で生きている。

バグダッドはコンクリートの壁と有刺鉄線に囲まれた地獄のような迷路で、BMWは「人さらい」の車で、4X4は自爆攻撃志願者が愛好する車で、隠れるべき安全な場所とてない。ロイターのスタッフは砂袋とコンクリートの壁というバリケードに囲まれてなんとか生きている。あえて外に飛び出して、オートバイで映像を集める唯一の人物アブ・アリは、一種、地域の英雄だ。石油パイプラインは無限で、抵抗は執拗だ。バタウイイン地域は、犯罪者ども、麻薬売買、売春及び人の臓器売買で、さながらダンテの神曲における煉獄だ。西部イラクは全くアメリカの管理下にない。モスルにはイラク抵抗勢力が潜入している。スンニ派三角形の抵抗派の首都であるラマデイは、誰あろう抵抗勢力が統治している。

闇からあやつられる
アメリカによって爆撃されたイラクのインフラストラクチャーを再建する資金は無いのかもしれないが、ハリバートンの下請KBRによる14の「耐久性のある駐留地」その実、恒久的軍事基地の建設と維持のためには、45億ドルもの金が即座に投じられた。このなかで最も悪名高いのは、バグダッド(かつてのサダム)国際空港に隣接して広がる北ビクトリー駐留地だ。ビクトリー駐留地はKBRが建設するエアコン付きバンガローで、バーガー・キングやジムも備えた14,000人を擁するアメリカ都市だ。完成すれば、バルカン石油パイプライン監視のために設けられたコソヴォにある巨大なボンドスチール駐留地の二倍の大きさになる。

アメリカの評論家ジェレミー・リフキンが、各国の現在の消費量と採取量で行くと、既知の石油埋蔵量があと何年もつか計算した。アメリカの場合、わずかに10年だ。対照的に、イランは53年、サウジ・アラビアは55年、アラブ首長国連邦は、75年、クエートは116年。そしてイラクの場合、優に526年以上あるという。これだけで中東の埋蔵石油支配にいたる理由を説明するに十分だ。

イラクでは、グリーン・ゾーンつまり、全能のアメリカ大使館による承認がなければ、何事も進められない。スンニ派の圧倒的大多数も、サドル派に共感を持つ不満を抱く多くのシーア派も、イラクに対するホワイトハウス/国防総省の軍事/企業の方針に従順でないイラクの新大臣連など、グリーン・ゾーンは決して大目に見はしないことを知っている。

ホワイトハウス/国防総省は、万が一の場合、何人かのトロイの木馬をあてにすることができる。長年にわたり国際グローバライゼーション・フォーラムの理事を務め、現在、イラクにおける企業の強欲ぶりについての本を書いているアントニア・フハスは、二人いるイラク人新副大統領の一人で、アラウイ暫定政府の元財務大臣であったアブデル・マフディという究極のトロイの木馬の重要な役割を指摘したごく少数の人々の一人だ。

マフディは、元アメリカ総督L・ポール・ブレマーが、イラク経済を徹底的に自由化するべく構想したショック療法を実行した人物だ。昨年12月、ワシントンの記者会見でマフディは、新たなイラク石油法はアメリカの大手石油資本にとって「非常に好都合」なものになろうと強調した(イラクの石油は、1972年に完全に国有化された)。マフディは、イラク国民の大半を恐怖にたじろがせるような方針である、イラク石油産業完全民営化を推進しつづけるだろう。ブレマーによって制定された無数の法規は皆有効なままであり、かろうじて新国会の3/4の投票によって改訂が可能であるにすぎない。SCIRIは、ワシントンと取引をした可能性があるという憶測が、イラクでは継続して、本気で広く伝えられている。「我々には政権をくれ、その代わり、あんたらは石油産業を支配してくれ。」

ジャファリ移行政権が、大衆の信頼をある程度の水準を得るため唯一の方法は、アメリカ完全撤退に対する断固とした最終期限を要求することだ。これにこそシーア派の大衆は票を投じたのだ。大衆の反対運動がどれほどの規模になろうとラムズフェルドはひるむまい。彼はサダムの秘密警察ムハバラート復活と、14の基地設置を狙っている。

ホワイトハウス/国防総省/グリーン・ゾーン枢軸は、「ショック療法」、規制緩和、広範な民営化、イラクの天然資源の支配を求めており、イラクは、アメリカ多国籍企業によって全てあるいは大半の政府資産とサービスを牛耳られ、イラク国立銀行株の大半を握る外国の金融会社によって全ての資産を支配された「規制撤廃された資本主義者の植民地」へとおとしめられた。これに反対の人々は街路にうって出て叫ぶことができる。イラクの「デモクラシー」などもうたくさん。影のイラク政府万歳!

Asia Times Online, 2005年4月21日
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/GD21Ak02.html

訳注:今日の新聞を見ると、内務大臣はこの記事で言われている人物ではないようです。

余計なひと言:最後の段落、「規制緩和、広範な民営化」人ごととは思われません。なぜ必要なのかを明かさない郵政民営化。戦う組合つぶしが狙いの国鉄民営化でJRが作られましたが、組合つぶしの無理が大事故につながているのかもしれません。
国の名前を変え、天然資源を「従順勤勉な民」に入れ替えれば、殆ど現代日本。属国の構造は相似形になるのでしょうが日本はタラバニ、ジャファリとアラウイばかり。
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goose さんによる544号の完訳版と、コメントです。
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【翻訳のお願い】 Return of the Spanish Delegation of CEOSI from Iraq: The occupation forces clearly on the defensive on the ground (IraqSolidaridad, 28/04/05)
http://www.albasrah.net/maqalat/english/0405/ceosi_280405.htm

アラブの声ML 齊藤力二朗
http://groups.yahoo.co.jp/group/voiceofarab/
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